影の呟き

影さんの小説を主に飾るブログです。

『零影小説合作』第一話〝転生と始動〟

 ゼロ君こと空白のゼロ氏と私、影星(カゲホシ)による、行き当たりばったりな共同小説物語です。


 空白のゼロ氏が前半を書き、後半を私が書くことで一話出来上がります。

 前記通り、完全行き当たりばったりです。お互い設定の擦り合わせすらしてません。

 設定を描写にぶっこんでは相方に書かせる。謂わば、合戦のようなものです。

 馬鹿なことしてるなー、と暖かい目で見守っててください。


 ☆の印から空白のゼロ氏、★の印から私の分です。

 流れとしては、


 ゼロ氏が前半書く⇨私が後半書く⇨取り敢えず一話完成⇨私が改訂を行う


 という感じです。

 因みにタイトルは毎回『○○と□□』という感じになってますが、『○○』の部分はゼロ氏が、『□□』の部分は私が毎回決めております。


 ではどうぞ。


 ※改訂版です。

 誤字や私(影星)とゼロ君による呼称の違い、あとは不自然と思われる表現を一部直しました。


 あらすじはある程度内容が進んでからゼロ君と相談で作ります。[2015/10/☆]


 


□◽︎□◽︎



 ——殺された。


 視界が混濁としている。

 体には無数の槍と矢が無慈悲に自らの体を貫いている。

 壁と床に広がるのは満遍のない血。

 紅い絨毯が、より濃い色になり生々しさを具現している。

 車軸を流すかのように止まらない血潮。

  

 内臓を心臓を、全ての器官を貫かれ、無様にも身からはみだしている。

 苦痛を与えながら死なせる為にわざと脳天には攻撃しなかったらしい。

 だが、このような体にされてはもう助かる余地はない。

  

 漆黒の闇に閉ざされながら、一人朽ち果てて行く。

 この少年は悲しい人間だ。

 十八年も生きられず殺された。


「あ……も、もう……じにだぐ、ねぇ」


 吐血しながらか喋ったせいか否か、明確に言葉が発せられない。

 死にたくないという積もった万感に桎梏されながら、まだ潤みを無くさぬ目を閉じようとした、その時であった。


「おにい……さま……?」


 目の前に眩しい一筋の光が自らを照らしたかと思うと、三人の幼女らしき人物が立っていた。

 だが、もうできない。

 誰何することも、他力本願することも。

 何もかも諦めるしかない。

 来世では良い人生を歩めると、そう信じるしかない。

 そして、『王』は目を閉じた。







「っ……!?」


 長い苦痛から解放されたかと思うと、気付けば木に寄りかかっていた。


「ここ、は?」


 辺りを見渡すと広大な野が広がっている。

 草木が敷き詰められるかのように生えており、見たこともない自然が広がっていた。

 清々しい風が金色の髪を揺らし、外の尊さを間接的に感じられる。


「それよりも、ここは何処だ? 都市ヘズムブルクでもなければザムンクレム王国でもない」


 しかし、ここで脳裏に稲妻が走った。

 何故、前世の記憶がある? そもそも自分は死んだのか? だとしてこの体は一体誰のものなのか、自分は元々何者だったのか。

 押し寄せる疑問の波に押し潰されそうになる。

 殺される寸前を思い出そうとすると、何故か激しい頭痛に襲われた。


 助けを求めようと立ち上がるが、立ち眩みもしていないのに、妙なことに体のバランスがとれない。

 直感的に、前世より背が低い男の体を持ったことを悟る。

 

「くそっ、色々と錯乱している……なんとか態勢を立て直さなければ」


 混乱する頭を抱えながら、素早く状況を整理して思考をできるだけ回転しやすくしようとした。


「おーい! アーサー! 何してんだよーそんなところでー!」


 すると、幼い子どもの声が聞こえ、思考を妨げる。

 視界に入ってきたのは三人の子どもだ。細い木の棒を肩に掛け、ボロボロの汚れた服を着ている。どうやら平民のようだ。


「……平民!?」


 すると彼は自らの姿をチェックし始めた。

 あの子ども達と同じような格好をしている。

 信じられない。信じられるはずもない。

 別にそれでも良いのだが、一体何が起こっている?


 自分は『王』という高い地位にいたはずなのに、気付けば平民の子どもに成り下がっていた。





 ——転生。

 目の前の三人の子ども達と自分の現在の姿。死んだ時の喪失感。

 子ども達にアーサーと呼ばれた彼は、唐突過ぎる展開に混乱は本格化していた。


 アーサーは自分の幼くなった身体を再び確かめる様に見る。

 意識を失う寸前は数十にも上る槍や矢が自分の身体に刺さり、宛ら針鼠の様な状態になっていた。端的に言うと、死んでいた。

 だが、今は怪我は愚か、傷の一つもない。強いて言うなら少し小汚いか。


「おい、アーサー。返事くらいしろよなー」


 少し責めるような口調でこちらにそう言い放ったのは、これまた少し汚れた白髪の少年だ。ニヒルと口の端を持ち上げてこちらを見つめるその少年からは、まだ遊び盛りのやんちゃな子どもの印象を受ける。

 二人の前に立っていることから、彼らのリーダー的な立ち位置なのだろう。


 アーサーは再び考える。

 目の前の子ども達からは敵意を感じない。寧ろ友好的だ。

 先ほど周りを見渡した時に、ここら一帯はひとまず安全ということが分かった。でなければ、目の前の少年がこちらに駆けてくる時点で、何かが起こっていたはずだ。


 今の自分は『アーサーという少年』らしい。ここは『アーサーという少年』になりきって適当に相手をし、一人になったところでまた状況を再確認するのが最善。その後は状況次第で決めるとするか。

 アーサーはそんな思考を約一秒で済ませ、


「あ、ああ。すまぬ。少し昼寝をしておった。今日は天気がすこぶる良いからな」


 と、早口に返した。

 先程一人声を発した時もそうだがやはり声が高い。この身体はまだ声変わりをしていないようだ。


 そんなことを考えながら声を掛けてきた少年達に視線をやる。その幼い顔はどれもきょとんとしていた。

 アーサーはその様子を見て顔をしかめる。返答を誤ったか、と。


「お前、そんな喋り方だっけ……?」


 確かに、アーサーの喋り方は子どものそれではなかった。実際はアーサーの中身が〝元若き王〟であるが故の口調なのだが、それを目の前の子ども達に言っても意味がなさそうである。

 だが、今更口調を変えても怪しまれるだけなので、このまま押し通すしかない。取り敢えず適当に相手しなければ。

 

「あ、ああ。最近読んだ本でこういう喋り方をする奴が居てな。かっこいいと思った故に真似ているのだ」


「はあ? そんなことよりよー、先生がお前を探してたぞ」


 突然話題が替わったと思ったら、新たな登場人物の入場であった。

 先生。学校の教員だろうか。このアーサーという少年は学校とやらに通っているのだろうか。


 それは恐らく違うだろう。そもそも平民にとっての学校とは、そこそこ裕福な家庭に生まれた子どもが行くものだ。

 しかしこのアーサーという少年の身形(みなり)を見る限り、それは無いだろう。

 つまり彼らが指す〝先生〟とは学校の教員ではない、別の存在と考えられる。


 他に考えられるのは師か。

 しかし、このアーサーという少年の身体からして武闘の師というのは考えにくい。痩せ気味なのだ、この身体は。肉を付ければマシになるのだろうが、今の時点では数分走っただけで倒れるだろう。

 やはり彼らの言う先生という存在はどういう立場の者か、分からない。


 一つ分かることと言えば、少年達の言う先生という存在はアーサーにとって敵ではないということだろうか。

 もし、その先生とやらが害を与える存在だとしたら、少年達の表情はもっと違っていただろう。

 

 ——この少年達、筋肉が少し付いているな。どうも引っ掛かる。


「そうか。少し身体が疲れていてな。連れて行ってもらえぬか?」


「ん? あー、いいぜ! なあ?」


 リーダー的少年は取り巻きの少年達に同意を求め、アーサーに肩を貸す。

 先程は立つことも儘ならない状態だったが、数分彼らと話したのが休息になったのか、なんとか立つことができた。


「行くぜ」


 リーダー的少年のその一言で、その野原から出て行き、道を進んでいく。



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 次回、第二話〝真実と金髪の少年〟