『第二回零影会合 in 名駅』レポート
私の起床は午前八時だった。
その日は先月より予定されていた第二回零影会合である。
厳密にはこれで会うのは三回目なのだが、一番始めに会ったのがその時の気分と偶然によるものが大きく、充分に計画を建てて会合を行った回数を数えるのならば一番始めに果たした対面はカウントされない。強いて言うのならば第零回零影会合である。
閑話休題。本題に戻す。
私の起床は午前八時だった。
私はそこから二度寝をした。
何故なら集合時間は午前十一時であり、集合場所が近くの駅から電車に乗って十分程であり、自分は準備をするだけなら食事も含め三十分で事足りるからである。完璧な計算だった。
また九時に起きれば良いや、睡眠時間が欲しい、と私はそこから凡そ四十分、枕に頭を預けた。
二度目の起床は午前九時だ。
布団を畳み、歯を磨き、顔を洗い、珈琲を入れ、トーストを作り、朝の食事をした。
そこまでの一連の動作は近頃の習慣、即ちバイトの日々の毎朝の習慣というのもあり、時間にして五分くらいしか時間を掛けていなかっただろう。
トーストを口に入れ、咀嚼をしていたら側に置いていたスマホがバイブレーションを起こす。通知が入ったのだ。
ツイッターの通知だろうかと思い、一応確認したところ、それはゼロ君からのLINEによるメッセージが来ていた。
内容はこうだ。
『ごめんな影さん』
『遅れるわ』
というものだった。
そんなメッセージを読むと脳がそのメッセージと今日の予定についての確認を行う。無意識にだ。
そして一つの疑問に辿り着く。
何故ゼロ君は九時の時点で遅れるとメッセージを送ってきたのか、というものだ。
彼の住む地域から、今回の会合の舞台である名古屋駅までは電車に乗れば集合時間である十一時には余裕で間に合うはずなのである。
そこで初めて私は己の勘違いに気付く。
昨日のやり取りを確認すれば、午前十時を集合時間に決めた自分のメッセージがあった。
時計の針は午前九時十三分を示していた。
それからというもの、私は急いで珈琲を飲み干し、歯を磨き、着替えていた。家を出たのが九時三十分丁度だったはずだ。
私は通勤の度に乗る、相棒の自転車を乗り近くの駅まで飛ばした。
因みにこの相棒、業腹なことに父親が買った高価なもので、電力アシストがある便利な自転車である。
私はそれを活用しつつ、それこそ風のように駅へと向かった。
駅のホームに着く頃には丁度電車が来ており、すぐに乗った。
その時にはまたLINEによるゼロ君からのメッセージが来ていた。
『ダメだこれ確実に10:30ぐらいになる』
『俺の不注意で予定していた時間の電車に乗れなかった』
『すまんな』
という申し訳なさが緊々と伝わる文章だった。
私は自分も時間に間に合うかどうか、怪しいものだったので都合の良い報せに内心ガッツポーズしつつ、通勤ラッシュかなんかの影響だろうかと思い、
『別にええぞ
時間が時間だしな』
と返したのであった。
私が名古屋駅に着いたのは十時三分だった。本来なら遅刻である。
電車に乗りながらもゼロ君との連絡は続いており、集合場所の認識の確認を取っていた。
そうやって連絡を取りながら歩いていると視界に『金の時計』が入った。
『閃いた
金の時計で待ち合わせよう
時間は10:30で良かったな?』
と、私はゼロ君にメッセージを送った。
そうして私達は午前十時三十八分に対面を果たし、その日、その月の会合を始めた。
否、それには語弊があった。
初めに向かったのは『アニメイト』付近にある『LAWSON』だ。
私はそこで一万円のiTuneカードを買ったのだ。
その後、二人で『アニメイト』へ向かった。
私達が発売を待ち望む『音使いは死と踊る』を出版する某ライトノベル文庫の書籍群を見て回ったり、好きな小説について語り合ったり、好きな小説を勧められたり、といった具合である。
そこから私達は一度手ぶらで『アニメイト』を出た。
そのままとらのあな名古屋店へ向かった。
入った当初は何処にライトノベルがあるか分からず、取り敢えず二階に上がったのである。そこはコミックなどがメインで売られているエリアだった。
「ちょ、ラノベは一階じゃねえの?」
ゼロ君のその一言で私達は一階へとまた降りた。
そこには、CDやDVD、Blu-rayが売られてるエリアだった。
そこで私は瞬時に階段付近にある案内を見てラノベは三階にて取り扱われているというのを確認し、三階へと上がった。
「つうか四階・五階の女性向けって、絶対BLものだよな」
「それを言うなら七階・八階の成人向けとか絶対行ったらダメなヤツだろ」
「それな」
そんな会話をしつつもラノベエリアである三階へと着く。
ゼロ君はどういう印象を受けたかは定かでは無いが、私が受けた印象は『アニメイトよりショボそうだな』、というものだった。
しかし見てみると中々品揃えが良く、私達が好む作品であり前述した『音使い』の作者が書いた作品も売られていた。
タイトルは『転生!異世界より愛を込めて』というものであり、とらのあな限定特典書き下ろしSSが付属されていた。それを見た私は衝動的に買うことを決心した。時間にしてコンマ七秒程だろう。
そして私はゼロ君の勧めで『灰色のグリムガル』の第一刊も買い会計を済ませ、とらのあなを出た。
「ちょ、俺さー。朝飯梅おにぎりしか食ってなくって、腹減ったんだよね。食いたい」
「せやな。俺も食うとしよう。腹が減った」
十一時三十分くらいを回った頃だった。
「えー牛丼にする? マックにする? マックだと一度通った道を戻らなきゃいけないけど」
「俺はどっちでもいい」
「その返答が一番困る」
どっちでもいい、と言ったのはゼロ君である。
当初の計画では、『マクドナルド』で昼飯を食うと決めていたので、少しどちらで食べるかで迷ったのである。
「じゃあさ、マックが混んでたら違う店にしよう」
「おけ」
その提案を出したのはどっちであっただろうか。私達はその意見に賛同し、実行した。
移動時間にして十分ほど。私の最近のバイトの話題で話しながらマックへと着いた。
中は行列というほどではないにしろ、待ち時間が掛かりそうなほど列ができていた。
「あーこりゃダメだな」
「せやな。何処で食おうか」
途方に暮れ、マック前にあるベンチで腰を掛けながら私達は考えた。
「うーんじゃあ吉野家にする?」
ゼロ君の提案に私はすぐに検索し調べた。
先ほど行ったすき家より遠い。
「いや、さっきのすき家より遠い」
「マジかよ……じゃあどっかいいとこないかな」
「俺もあまり詳しくないんだよなー」
再び途方に暮れる。こういうナヨナヨしたものは良くない。そう判断した私はすぐに決断をした。
「よし、さっきのすき家にしよう」
「マジで? 戻るの?」
「いやだって、それ以外思い浮かばないし」
と、いうことで私達は『すき家』で昼飯を済ませた。
因みに私は特盛牛丼を食べた。美味しかったがメガ盛りにすれば良かったと少し後悔した。
そこは見晴らしの良い景色が楽しめるところで、天気さえ良ければもっと楽しめたであろう洒落たカフェであった。
私はブレンドコーヒーのホットとティラミスを食べた。
そのカフェで私は先ほど買った、一万円のiTunesカードのコードをiTuneにて登録し、某竜道のソシャゲにて十一連ガチャを回し爆死した。
その頃には午後二時を回っていた。
この後も会合という名の暇潰しは続いたのだが、時間が無いのでまたの機会にしようと思う。